大判例

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福岡地方裁判所 昭和44年(ワ)1275号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕被告会社が消火器や火災報知機の取付工事を営み、訴外会社がその工事を下請していること、訴外会社が被告会社福岡営業所の指揮監督下に右請負工事の施行をしていることは当事者間に争いがない。

<証拠>を綜合すると、訴外会社は九州に進出するとともに、その所有する加害車と従業員土屋照雄を出張させて工事にあたらせていたこと、そして下請工事については訴外会社は昭和四一年一一月一日被告会社と専属工事請負契約を結んだ際、被告会社の工事協力業者請負範囲規程、支給資材取扱規程、瑕疵取扱規程に従うことになつたが、被告会社から資材を供給されると、それを工事現場に運搬して取付工事を行なうものの、資材は原則として被告会社福岡営業所で受け渡されること、本件事故は右訴外人が下請工事現場へ赴く途中惹起されたものであるが、当時加害車には被告会社の従業員は乗つていなかつたし、工具類を積載していただけで資材は積んでいなかつたこと、一方前記下請契約は専属的で、訴外会社としては福岡出張所を設けて進出後間もない頃でもあつたので事務所倉庫ももたず、資材等保管する場合にも加害車に積んだままにしていたこと、また支給された資材の保管使用については前記規程によつて被告会社の指導調査を随時受けることになつており、また下請工事については完成検査を始め、施行中の検査について常に指示を受けるほか、下請業者の従業員名簿を元請会社に提出して右従業員の行動につき被告会社の指示があればいつでも本人に連絡のとれる態勢を整えており、また元請会社の研修に参加して技能の修得向上を図ることになつていることが認められる。

右事実から考えると、被告会社が加害車を業務用に使用し自己のために運行の用に供していたものと断定するにはいささか躊躇を感ずると言わざるを得ないが、しかし、右のように元請たる被告会社と下請たる訴外会社との間に専属的関係があつて、下請の工事について指揮監督をすることは勿論、その資材等元請会社の提供を受けるほか、下請人の従業員についても指揮監督の及ぶようにしている等元請会社において常に下請人の人的動向を把握していること、本件事故も元請のための下請工事に従事中のものであることの諸事実を綜合すると、訴外会社の従業員たる訴外土屋には被告会社の指揮監督関係が直接間接に及んでいると見るべきである。而して、<証拠>を綜合すると、訴外土屋が加害車を運転して路面電車の軌道敷と道路左端のほぼ中央あたりを進行中、本件事故地点の手前約九メートルの位置に至つて始めて本件事故地点で左折することを知り、左折の合図をするとともに速度を落して道路左側に寄りかかり、左折を開始したのであるが、その際左折方向にのみ気をとられて左後方から同一方向に直進してきた原告運転の被害車に気ずかなかつたため遂に接触したことを認めることができるので、本件事故が右訴外人の過失によることは明らかである。右訴外人の行為が事業の執行中なされたものであつて、被告会社において選任監督につき相当の注意をなしたことを認むべき証拠がないので、被告会社は使用者として民法第七一五条第一項の規定に従い本件事故によつて生じた損害を賠償しなければならない。 (富田郁郎)

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